大野結也の広島小説と修道物語

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広島大学の旧実験棟で見つけた、壊れた時計の物語

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広島大学の旧実験棟で見つけた、壊れた時計の物語

広島大学の端にある旧実験棟は、今ではほとんど使われていない。壁の塗装は剥がれ、廊下には古い機材が積まれたままになっている。私は取材の合間にその建物へ足を踏み入れた。薄暗い廊下を進むと、ひとつだけ灯りのついた部屋があった。中では、ひとりの学生が机に向かい、壊れた時計を分解していた。


動かないんですけど、捨てられなくて。彼はそう言った。時計は祖父から譲り受けたものらしい。広島に来てから、彼はこの時計を修理しようと何度も挑戦したが、うまくいかなかった。祖父が亡くなったとき、この時計だけが残ったんです。時間が止まったままなのに、なんだか生きてるみたいで。彼は小さな歯車を指先でそっと持ち上げた。実験棟の静けさが、彼の作業を包み込んでいた。広島に来てから、時間の流れが少し変わった気がするんです。忙しいのに、どこかゆっくりしているというか。


彼は壊れた時計の針を見つめた。この時計が動いたら、祖父が広島に来てくれたみたいで嬉しいんですけどね。彼は笑った。部屋の窓から差し込む光が、時計のガラスに反射した。その光は、止まった時間の奥にある記憶を静かに照らしているようだった。